人事評価システム選定時に確認しておくべきポイント6選
人事評価システムの導入段階でGapに気づき、導入を見送ったことはありませんか。
人事評価は独自のビジネスモデルを支える重要な評価制度です。それ故、上場企業ともなると譲れないポイントがあり、評価制度も各社各様になります。こうした事情により、人事評価システム導入段階になって自社制度と選定システムのGapに悩むケースは数多く存在します。
そこで今回は上場企業において人事評価システム選定時に確認しておくべきポイントをまとめました。
①評価手法
一般にシステム化が検討される評価手法は、目標管理型・能力評価型・360度評価型の3つです。
・目標管理型
目標管理型は期初に目標を立て、その目標に対しての実績を期末に評価します。この目標は自由に本人が立てるケースもあれば、組織目標からブレイクダウンして立てるケースもあります。
そこで前者のケースでは目標設定・評価時に被評価者・評価者が過去評価結果を参照できるか、後者のケースでは組織目標をブレイクダウンして作成できるか、並びに目標設定・評価時に被評価者・評価者が組織目標を参照できるかの確認が必要です。
・能力評価型
能力評価型は目標設定を行わず、期末評価から人事評価が開始されます。
従業員の職能資格・役職・部署などから自動的に評価内容が決まるためです(例:コンピテンシー評価)。
能力評価型で最も重要な確認事項は、導入を検討している人事評価システムが職能資格・役職・部署の種類分、評価設定を行う必要があるか否かです。
というのも、多くの人事評価システムでは評価表が違えばその分だけ設定が必要になります。
職能資格・役職・部署ごとに人事評価の設定を分けて運用するのはシンプルな運用となる反面、評価項目に変更が発生した場合の修正工数が多くかかってしまいます。
また細かいですが
「期中異動が発生したケースでは異動後部署の評価者が異動前部署で実施した評価表を参照できない」
「評価調整時に組織全体を母数とした分布図が作成できない」
といった問題も発生し得ます。
そこで基本的には評価表を分けない運用が好ましいです。
・360度評価
360度評価は役員評価や後継者管理に向けたマネジメントの能力評価、ハラスメント防止のためのアンケートとして実施されます。
利用用途が様々であることや採用企業数がそこまで多くないため(上場企業の15%が採用していると言われていますがシステム化している企業は体感としては5%程度です)、自社と合致するシステムが見つかるケースは非常に少ないです。
360度評価の対象者数は全従業員のうちの数%しかないため運用負荷が大きくないこと・人事部にも閲覧させたくない情報が入り得ること(例:役員間の相互評価内容)から、Excel運用や外部委託が効率的です。
それでも360度評価のシステム化を検討したい場合、検討しているシステムに以下の機能があるかを詳細に確認することをお勧めします。
-評価者決定
被評価者から評価者の指名、ルール(例:所属部門の上長、所属部署の部下)に基づいた評価者の自動登録
-評価記入
評価者の立場に応じた評価表入力項目の制御(例:上司としての立場で入力する場合には「目標達成へのこだわり」という項目が表示される)、本人コメントの入力可否、秘書や部門担当者等による評価代行入力
-評価集計
評価表への評価結果の自動反映、グラフ表示(特に過年度評価結果もレーダーチャートで表示可能か否か)
-フィードバック
本人のコメント入力
②評価表の再現
現在運用している評価表を人事評価システムで再現できるか確認することは非常に重要です。
ここで特に確認すべきことはレイアウトではなく、評価項目や評点/評定算出ロジックです。
例えば部門・等級・役職に応じたコンピテンシー項目を表示できるか、評点/評定算出ロジックを制度通りに運用できるかなどです。
特に重要なのが評点/評定算出ロジックです。上場企業の人事評価では1つの評価に能力評価・行動評価・業績評価・情意評価を組み合わせて実施するケースが多くみられます。
この際、各評価にウェイトをつけて最終評点・評定を算出することになりますので評価表内で評点/評定算出ロジックを走らせる必要があります。自社の評点/評定算出ロジックが複雑であればあるほど実現可能な人事評価システムは限られますので、選定前に詳細な確認が必要です。
このように人事評価制度通りに評価項目が設置できるか、評点/評定を自動算出できるかは必ず確認するようにしましょう。
③フィードバック
人事評価においてフィードバックとは、中間評価と評価確定後の評価フィードバックに分かれます。
評価確定後の評価フィードバックは「フィードバックを本人が確認済であることを証跡として残せるか」「フィードバック後に本人コメントを入力できるか」という細かい論点はありますが、概ね多くの人事評価システムで評価確定後の評価フィードバックは対応可能です。
一方で中間評価は大きくGapが出やすい部分になります。
というのも中間評価では評価事実(例:営業実績値)を評価表に反映する・毎月中間評価を行うといった運用があるためです。
特にBtoC向けの営業部門(例:不動産仲介会社、飲食会社)でこの運用が多くみられます。
また毎月中間評価を実施するケースは遅行指標・先行指標に基づいて評価するパターンが一般的ではありますが、稀にSNSのようにチャット形式でリアルタイムにフィードバックを行うことを重視する運用をしているケースがあります。このケースでは伝統的な人事評価システムというようりはSNSライクなチャット機能を重視した人事評価システムを選定する必要があります。
つまり中間評価においては「自社が評価時に根拠としたい評価事実を、どれほど手間なく参照させることが可能か」という点で人事評価システムの仕様を確認する必要があります。
④評価フロー
多くの人事評価は「(本人評価)→一次評価→二次評価→評価調整→評定確定→評価フィードバック」という流れで進みます。
多くの人事評価システムでは上記の流れを再現できるため、評価フローが問題になるケースは稀です。
ただ以下のように上場企業ならではの機能においては人事評価システムによって対応有無が異なりますので注意が必要です。
・評価フロー外の人物による評価表参照
上場企業における評価では、評価フロー外ではあるものの適時評価状況を参照する必要がある方(例:本部長、内部監査・監査法人担当、部門担当人事、異動後上司)がいます。
そこで評価フロー外の人物でも特定の条件を満たす方については評価表を参照できる必要があります。
・代行入力
PC操作時間を十分に確保できない評価者がいる場合には、評価代行入力が可能な人事評価システムを選定する必要があります。特に評価代行入力を重宝する方は、役員や多店舗・工場勤務の評価者です。
この場合、役員秘書や部門担当人事による評価表の代行入力、一次評価結果の一括取り込み機能が選定時に重要な機能要求となります。
⑤人事システムとの連携
人事評価は例外処理が多い一方で短期間かつミスなく確実に実施しなければならず、極力自動化できる部分は自動化することが好まれます。
そこで以下のような処理を人事システムと連携して自動化できるか選定時に確認が必要です。
・被評価者・評価者の自動登録
人事システムに登録されている組織構造や役職情報から、人事評価システムに被評価者・評価者情報を取り込める構造になっていることが望ましいです。
多くのケースではCSVを介して取り込みが可能ですが、発令情報の反映漏れによって取り込めない・人事システムに評価時点の等級・役職を表示できないといったケースがあります。
・人事情報の参照
評価時には被評価者の過去評価結果のみならず、個人情報・学歴・発令情報・保有資格・業務経験歴といった人事情報を参照させるケースがあります。
「人事システムからデータを連携する」か「人事システムから出力した台帳をPDFで人事評価システムにアップロードもしくはURLリンクを記載する」のどちらかの手法が採られますが、いかに工数をかけずに実現できるか確認が必要です。
・評価結果の連携
人事評価システムから人事システムに評価結果を連携する方式は、多くはCSV形式です。
これは人事システムに格納すべき評価項目が評価手法によって異なるため連携先の項目を一意に特定できないことが原因です。
そこで人事評価システムから、自社が利用している人事システムに取り込める形式のCSVデータを出力できることを確認しておく必要があります。
⑥期中異動者への対応
期中異動が発生した場合、該当する従業員の評価は異動前・異動後どちらか一方の部門で評価されることが比較的多いです(例:評価期間中長く在籍した部門で評価される、異動後部門で評価される)。
この場合の運用はシンプルになるため問題は生じませんが、異動前・異動後部門両方で評価する場合には以下の2点に注意する必要があります。
・2つ目の評価表作成
期中異動者については異動前・異動後で評価項目・評価フローが異なる評価表を2つ以上作成できる必要があります。目標管理型の評価手法を採用している場合では、異動後部署では評価前に目標再設定が必要になります。
2つ目の評価表作成方法は「被評価者が人事評価システム上で操作する」「人事が発令情報を基にCSVを作成して人事評価システムに取り込む」「人事システムの発令情報を基に自動で評価表を作成する」の3パターンがありますが、現実的には「被評価者が人事評価システム上で操作する」「人事が発令情報を基にCSVを作成して人事評価システムに取り込む」のどちらかで運用されるケースがほとんどです。
・評価按分
評価表が2つ以上存在する場合、異動後評価を正として扱う運用であれば、異動後評価者が異動前評価結果を参考情報として参照できるようにすれば運用とされるケースは多いです。
ただ稀に在籍した評価期間でウェイトをつけ各評価表の評点を按分して最終的な評点・評定を算出する運用を行う企業があります。按分計算が必要な評価制度の場合は按分計算機能があるか確認を行いましょう。
いかがでしたか。
人事評価は用語や制度設計が企業ごとに大きく異なるため、RFP上で「実現可能」とされていても、実際には自社要件を満たせないケースが少なくありません。
そのため、システム選定にあたっては「評価表レイアウトの再現可否」「評価フローの設定可否」といった表層的な機能確認にとどまらず、制度運用上ギャップが生じやすい論点まで具体的に確認することが重要です。
